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前略、田中絹代様。。。
今、日本を代表する映画女優っているだろうか?
女優のみならず、男優も
「映画界のスター」と堂々と呼ばれる人は殆どいなくなった。

銀幕全盛期だったその昔。。。
三船敏郎vs黒澤明
原節子vs小津安二郎。。
と同じくらいの”映画スターと監督”の名コンビがいた。





田中絹代(1909~1977)vs溝口健二。。

私は田中絹代という、かつて日本を代表する女優をあまり好きではなかった。
原節子のように華やかでおおらかな美しさは無く、
              ↓
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ちょっと小意地悪そうで美人でもない。。
確か亡くなる少し前
『前略、おふくろ様』というドラマでショーケンの母役をやっていたが、
あまり記憶がない。
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まだ私が若かったこともあり、彼女が亡くなった時(脳腫瘍で)
「日本の大女優が亡くなった」と騒がれても
う~~~~ん。。。そうなんだ。。凄い女優なんだ。。?
という程度でピンと来なかった。。
そんな私も『愛染かつら』に上原謙(加山雄三の父)と出ていたのはよく知っていた。
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母や祖母が「すごくヒットしたのよ~!」と言っていたから。
それでも顔がパッとしないし、あまり興味を持たずにいたのだが。。。十数年前、小津安二郎監督の初期作品
『風の中の牝鶏』を衛星放送で観て、震えた。。。
田中絹代扮する良妻が、夫の失業(たしか。。)で窮地に。。
ついに昼間自宅で自らの身体を売る。
その直接的シーンは無いのに、夫が帰ると
「お帰りなさい」と少しほつれた髪をささっと直す。。そして、心なしか高揚したような目が。。
これで充分わかるんだな。。良いな!こういう演出!
やがて夫に知られ、もみ合って階段の上から下まで転がり落ちる!!
これが、凄すぎた!!(つかこうへいも真っ青@)
貞淑な妻と、売春した妻の顔。。
メイクを変えるわけでもなく、演技を大げさに変えるんでもない。
なのに、艶っぽいのだ。。
その挙句、階段アクションのすさまじさ☆(興奮して同じ事書いてる。。。)

私は映画女優・田中絹代をこの時初めてしっかり観た。唖然とした!

その後観た、田中と相思相愛の噂もあった溝口健二監督の
『西鶴一代女』(ヴェネチア国際映画祭、国際映画賞)。。
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名家の女が運命に翻弄され次第に堕ち、最後は老醜に厚化粧で夜鷹に。。
これはもう、田中しか出来ない素晴らしさだった!

『雨月物語』(ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞)では
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私の大好きな森雅之の恋女房役だが、行商に出た夫は妖艶な幽霊、京マチコに魅せられ家に帰らない。
そうとは知らず針仕事をし、いつまでも家で待つ田中の可愛さ、いじらしさ。。。
究極に貧乏臭い。。でも健気で夫への愛に溢れている。
やっと京マチコが幽霊と分かって村に戻る夫に悲しい知らせが。。
盗賊に女房は殺されてしまったのだ。
が、翌朝女房がにこにこ針仕事をして、温かい味噌汁まで用意している。。
「おかえりなさい」
これは幽霊なのだが、その姿の神々しいまでの美しさ。

これで、私の「田中絹代嫌い」は完全にひっくり返り
やはり田中絹代は最高の映画女優だったと認めたのだ!(偉そう・・・)
低い抑えた声、抑えた演技、
どこにでも居そうな素朴な丸顔に鋭い目の光。。

女中顔と言われる地味な彼女がひとたびカメラの前に立つと
男たち(共演者やスタッフ)は勃起してしまうほど、エロティックな人だったそうだ。
田中絹代は生涯女優であり、最後の床でも
「目が見えない。。こんな私の出来る役、あるかしら?」
と言っていたそうだ。
まさに役者魂のかたまり!カメラの前でいつも愛を交わす女だったのだろう。。
まだ彼女の映画を観ていない方、機会があれば是非観てください♪


  注)かなり記憶違いがあるかも。。cambonさん、ごめんなさい。
by kasekijyo | 2008-05-07 19:02 | 映画
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